株式会社ヘラルボニー

代表取締役社長:松田 崇弥
所在地:〒020-0026 岩手県盛岡市開運橋通2-38 @HOMEDELUXビル 4F
事業内容:企業・自治体・団体・個人の課題を洗い出し、仮説を立て、福祉を軸とした社会実験を共創
URL:https://www.heralbony.jp

異彩を、放て。をミッションに掲げる福祉実験ユニット「ヘラルボニー」

株式会社ヘラルボニーは、異彩を、放て。をミッションに掲げる福祉実験ユニットです。 企業・自治体・団体・個人の課題を洗い出し、仮説を立て、福祉を軸とした社会実験を共創します。

福祉実験ユニット「ヘラルボニー」

アートを消費財としてではなく、永遠に残るように「データ」として保管するアートビジネス

― 福祉実験ユニットとして存在する「ヘラルボニー」。その事業内容を詳しく教えていただけますでしょうか。

はい。いま、世界中で福祉施設でのアート活動が大変盛り上がってきています。日本でも、20186月に「障がい者文化芸術活動推進法」が可決されて、障がいのある人たちの芸術活動に対して、文化庁も予算を付けていこうという動きも出てきて、芸術活動をどんどん福祉施設で行えるように進んでいます。

ただ、良い意味で裾野が広がっているものの、なかなか営利活動には繋がっていない現状があります。

私たちは、そうした中でアート活動をしている30以上の福祉施設とアートライセンス契約を結ばせてもらっています。彼らとアートライセンス契約をした作品を、完全に公開上のデータにして自社のIP(知的財産)として保有させていただいています。

ヘラルボニーの持っている2,000点以上のアートデータをライセンスとして有名ファッションブランドや商社、代理店等にデータとしてお渡しして、そのライセンス料をいただくというビジネスモデルを構築しています。

つまり、「アート」を消費材として作るのではなく、永遠に残るように制作し、「データ」として残す。「アート」のデータ軸とした「アートビジネス」を行っているという会社です。

使命は、障がい者と社会の窓口となること

― 今、お話があったように、なかなか営利活動に繋がっていないというお話がありましたが、なぜなのでしょうか。

福祉施設は、一般的に社会福祉法人やNPO法人のような非営利団体が運営しています。また、国から福祉施設に対して、毎月運営のための支援資金が入っていくという仕組みなので、営利活動が目的の場所ではないんです。でも、そうした場所で、「アート」が生まれている。

もう一つ、僕自身が認識している原因として、福祉施設は、社会福祉士という資格を持っている人たちが務めているのですが、福祉のプロではあっても、営利活動までやるのは難易度が高いと純粋に思われている方が非常に多く、障がいがある人の「アート」作品を世に出すことを管理するというのは難しい現状があるんですよね。

こうした状況下で、作品を生み出している重度の知的障がい者の方、あるいはその方々の親御さんにも、「世の中にどう発信すればいいのかわからない」というもどかしい現状があると思います。

そうした方々と社会を繋ぐ窓口として、ヘラルボニーが存在するということを意識しながら活動しています。

障がい者の平均月収は、分類によって大きく異なる

― 福祉施設としては営利活動を行う場所ではないから結局、アートビジネス活動もできないという現状があるんですね。全く知らない領域でした。

はい。営利活動をやりたいと思っている福祉施設はいっぱいあって、活動をやるにも限界があるという感覚が、僕の肌感覚としてはありますね。

福祉施設は、営利活動をすることよりも、障がいのある人達の“場”を作るということに重きを置いているので、障がい者の方々の平均賃金の向上とか、そういうことはあまり重点を置きにくい構造なんですよね。

少し細かい話になるのですが、障がい者には、「就労支援A型」「就労支援B型」「生活介護」という区分があります。「就労支援A型」というのは、聴覚に障がいがあったり、視覚に障がいがあったり等、身体的な障がいの方で知的に障がいはあまりなく、結構体を動かせたりできるんですね。そのため、工場とか検品作業とか結構工賃も高い。月の平均が9万円とかだったりするんですよ。

他方、「就労支援B型」というのは、知的に結構障がいがあったりだとかして。障がいは重すぎないけれども、ちょっとした軽作業ができるぐらい。この場合だと、毎月の平均賃金が16,118円なんですよ。A型の方と全く違う。

そして、「生活介護」、私の重度の自閉症を持つ兄貴も、生活介護受けているんですけれども、

うちの兄貴は空き缶潰しをやってます。毎月3,000円しかもらってないんですね。差が激しい。

楽しくアートを創り、障がい福祉に革命を起こす

― まったく知らない世界で、驚きの連続です。それぞれの認定の種類で賃金に大きな差が生まれているのですね。ちなみに、ヘラルボニーと契約している方は、どのような区分の方が多いのでしょうか。

僕らヘラルボニーが契約しているのは、就労支援B型が半分くらい、生活介護が半分くらいです。

本当に、賃金が少ない施設でアート活動もしている施設とクリエイションしていく機会が圧倒的に多いですね。

最近、ヘラルボニーと契約している作家の中で、やっと、ライセンス料だけで月10万円単位で生活が出来る方がで現れてきました。やっぱりそれって本当に、重度の知的障がいある人たちの親御さんにとっては、“革命的なこと”なんですよ。

3,000円とか5,000円とかしか毎月工賃としてもらえていなかったのに、アートデータのライセンス料で安定した生活収入が得られる。本当に、大げさにいうと、世界が変わったような、そんな感覚になります。そうした作家が増えてきて、本当に活動していてよかったと感じています。

さっき少しだけ出しましたが、僕自身、重度の自閉症の兄がいます。そんな環境で、いつも思っていたのは、“できないことをできるようにしていくっていうのは限界がある”ということでした。そうではなくて、“すでにできるところ”とか、“得意なところ”のみ抽出して、そこをただ“楽しくやって”いれば、勝手にお金になっていくという構造を作りたいという想いが「ヘラルボニー」の原動力になっています。

そうした想いがあったからこそ、作家が持つ原画自体を売り物として押し出すのではなくて、原画をデータ化したIPの著作物として取り扱うことを思いつきました。

一般的な現代アーティストであれば、新作を書き続けて、ギャラリーと契約して売るというのが当たり前なのですが、なんというか、それだと芸術やクリエイティブが消費されていくという感じで、誤解を生まない正直な言葉で話すと、やっぱり作品を生み出そうとする気持ちも疲弊してくると思いますし、楽しく描き続けるということは、やっぱり難しくなってくるんじゃないかなと思っています。

ヘラルボニーは、それを重度の知的障がい者の人たちにはやりたくないなと思っていて、作家が感性のままに作った既存の美しいものをデータ化させていただいて、その著作権を扱っていくっていうようにしています。

「食べチョク」の秋元さんも太鼓判のプログラムに参加を決めた

―ありがとうございます。そもそもNEXsTokyoに応募されたきっかけは何でしょうか。

とある企業が運営されているインキュベーション施設が渋谷にありまして、採択いただいててから、かなりの頻度で、ずっと通ってたんですよね。そこのコミュニティマネージャーの方が教えてくださいました。

当時、ヘラルボニーは、いろんなピッチコンテストに出まくっている時期で。これからシリーズAに向かっていくタイミングで、ちょうどNEXsTokyoのモデル事業創出プログラムの募集が出ていたんです。それで、すぐに受けてみようって考え始めました。

そうですね、シードラウンド終わって4か月後とか、そのぐらいですね。

シリーズAに向かっていた当時、ヘラルボニーにはベンチャーの毛色が全くなくて。「ベンチャーってどういうことなのか」「これから何をしなければならないのか」・・・そういうのも含めて、ちゃんと将来のことを考えなきゃなって思っていたときに、教えていただいたという次第です。

あー、そうだそうだ、「食べチョク」の秋元さんからも、NEXsTokyoのことを聞きました。たまたま、同じイベントに登壇する機会があって、秋元さんがNEXsTokyoプログラムに採択された際、どうだったのかなって。そしたら、「このプログラム、めっちゃいいよ!」っておっしゃっていて、「これはもう応募するしかない」と思いました()

いまをときめく方ですからね、間違いないなと!

アクセラレータのおかげで、前に進む力を身につけることができた

―いろんな方からのお墨付きを受け参加したプログラムですが、全体としての感想と一番良かったなと思うワークショップやセミナーがあれば、教えてください。

あのー…本当に、採択していただいてから、全てにおいて、ありがたかったですね。僕にとって、NEXsTokyoで一番良かったと思うことは、毎週メンタリングしていただいたということです。なぜかというと、採択当初、ヘラルボニーにはCFOや財務回りの専門家がいなくて、僕自身もそういったことに疎く、本当に弱点でした。

資金調達に関する資金政策表や事業計画書が相当弱くて、きちんと練られていない状況だったんですね。

今回伴走していただいた松田さんと坂田さんというアクセラレータの方に、財務が弱いというお話をさせていただいたところ、毎週の定例会におけるゴールとして、「事業計画書を完璧にすること」「資本政策表を完璧にすること」というのを掲げることになりました。

この5か月間で完全に完璧にするっていうのを掲げた結果、現在シリーズAのリード投資家とかも決まりそうですし、本当に感謝しています!やっぱり、あの定例会があったから、本当にすべての資料についてブラッシュアップできたと思っています。加えて、先ほどプログラムへの応募理由でも話したように、ベンチャーの毛色が無かったヘラルボニーが、「本当の意味でのスタートアップ文脈に乗れた」っていうか、投資家にも夢を見せられるような企業に、事業計画上は成れたと本当に思っています。

もう一つ、大きな変化として、お二人に事業計画書と資本政策を完璧にしていただいたおかげで、この5か月間で急にピッチコンテスト勝てるようになってきたんです。

本当に、5か月前だと絶対に勝てなくて。今だから分かるのですが、事業計画上で掲げていた数値の仮設検証が全くできていなかったですし、ベンチマークも設定できていなくて、できていなかったことが山のようにあったから、全く優勝なんて、箸にも棒にもかからなかった。

いまは、プレゼンしていても、「これは、確かに、いくかも」という空気感を感じるようになりました。

こうした確かな自信を得られたのは、やっぱり、松田さんと坂田さん、そして事務局のみなさんに伴走いただいたおかげだと思っています。5か月前より、自分自身が本当にレベルアップしたという確かな実感がありますね。質疑応答にこたえられるようになってきたというのも、本当に大きな出来事で、本当に心から感謝しています。

今後の展望として、事業計画書にも書いているのですが、自社のインテリア事業を拡げること、そしてライセンス事業の収益を完璧にすることを目標としています。シリーズAに向かっていま進んでいる中で、2年後シリーズBに会社を持っていくこと、また、社会全体としては、知的障がいのイメージを変え続けていくこと、これが、私たちが考えるヘラルボニーの将来です。

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いかがでしたでしょうか?障がい福祉に「アート」で革命を巻き起こす松田さん。今回は「事業内容」「NEXsTokyoへ参画理由」「印象に残ったプログラム」でした。

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